最近では、銀行株への投資や金融機関の業績がニュースで取り上げられる機会も増えています。
しかし、銀行の決算書を見ると、「預金」「貸出金」「有価証券」など、一般企業では見慣れない勘定科目が並んでおり、「普通の会社の決算書と何が違うのだろう」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
銀行も株式会社であるため、貸借対照表や損益計算書を作成していますが、その内容は製造業や小売業など一般企業とは大きく異なります。
その理由は、銀行のビジネスモデルそのものが違うためです。
この記事では、
- 銀行の決算書が一般企業と異なる理由
- 貸借対照表で特に見るべき項目
- 銀行を分析するときのポイント
について、決算書の視点から分かりやすく解説します。
結論|銀行は「お金」を商品として扱う会社
先に結論から記載すると、銀行の決算書が一般企業と異なる最大の理由は、預金などで資金を集め、それを貸出や有価証券などに運用する金融サービスを提供している会社だからです。
一般企業では、
- 商品を仕入れる
- 製造する
- 販売する
という流れで利益を生み出します。
一方、銀行は、
- 預金などで資金を集める
- 貸出や有価証券で運用する
- 利息収入を得る
という仕組みで利益を生み出します。
そのため、貸借対照表の資産・負債の構成も一般企業とは大きく異なります。
銀行の貸借対照表は以下のような形式となっています。

銀行の貸借対照表の特徴
銀行の貸借対照表には、他の一般企業にはない特徴があります。
負債の部が大きい
銀行の貸借対照表で最も特徴的なのが、負債の部の割合が大きいことです。
その理由は、負債の大部分を占めている預金です。
銀行は地域金融機関でも非常に大きな預金残高を抱えており、メガバンクともなれば数百兆円規模の預金を集めています。
一般企業では借入金が負債の中心となることが多いですが、銀行では顧客から預かった預金が負債として計上されますので、必然的に負債の部の額が大きく膨らむことになります。
ただし、これは悪いことではありません。
銀行にとって預金は、事業に必要な資金を調達する重要な手段です。預金などで集めた資金を貸出や有価証券などに運用し、その利ざやなどから収益を得ています。
資産の部は運用を示している
資産の部は、集めた資金をどのように運用しているかを示しています。
例えば、
- 貸出金
- 有価証券
- コールローン
- 特定取引資産
などが並びます。
運用資産以外の資産である有形固定資産や無形固定資産等の表記については、一般企業と同様です。
つまり銀行は、預かったお金を運用することで利益を生み出す会社ということが貸借対照表から分かります。
運用資産の中身
製造業では、工場などの不動産や、製造設備が資産の中心となりますが、銀行では、金融資産が資産の大部分を占めます。
銀行にも、本店・支店や基幹システム、ATMといった資産はありますが、割合としては大きくありません。
つまり銀行では、設備よりも運用資産が利益を生み出す源泉となっています。
銀行の金融資産には例えば次のものがあります。
貸出金
銀行の主要な運用資産であり、企業に対する事業資金の貸出や、個人向けの住宅ローンなどが含まれます。
有価証券
銀行にとって有価証券は重要な運用手段です。
有価証券は株式と債券に大別され、債券はさらに国債・地方債・社債などに分けられます。
コールローン
銀行などの金融機関が、日々の資金過不足を調整するために、短期の資金を貸し借りする市場をコール市場といいます。
コールローンは、コール市場を経由する資金貸付を計上する科目です。
反対に、コール市場で資金を借入するとコールマネーとして負債の部に計上されます。
特定取引資産
銀行がトレーディング目的などで保有する金融商品を計上する科目です。商品有価証券や特定取引有価証券、デリバティブ取引などが含まれます。
反対に、負債側では「特定取引負債」として計上されます。
貸倒引当金と自己査定
銀行は企業や個人に融資を行いますが、その貸出金が返済されないことを貸倒れといいます。
融資を行う際には、審査を実施しますが、融資先の状況変化により貸出金のうちごく一部は貸倒れとなります。
そのため、将来貸倒れが発生した場合の損失に備えて、「貸倒引当金」を計上します。銀行の貸借対照表では、貸出金などの資産から控除する形で表示されるため、資産の部のマイナス項目として見ることができます。
この引当の算定にあたって、銀行では融資先の信用リスクを評価するための自己査定が行われます。
自己査定は貸出金や有価証券等を対象としています。大きな流れとしては、まず、信用格付にもとづき、債務者区分を行い、正常先、要注意先、破綻懸念先といったかたちで分類します。次に、担保や保証の保全状況等を加味した債権分類を行います。
そして、債務者区分および債権分類に基づき、必要な貸倒償却や貸倒引当金の繰入額の算定を行っていきます。
貸倒引当金についてはこちらの記事で解説しています
→貸倒引当金とは?|意味・計算方法・企業分析での見方をわかりやすく解説
自己資本比率の考え方
銀行の自己資本比率は、他の業種の自己資本比率とは算定の仕方が異なり、自己資本をリスク・アセット等のリスク量で割って算出する指標です。
自己資本には、普通株式に係る株主資本や利益剰余金などが含まれます。銀行の自己資本比率規制では、単純な自己資本の金額だけでなく、その「質」も重視されています。
リスクアセットは、資産の各項目にそれぞれのリスクウェイトを乗じて得た額の合計額(信用リスク)、資産の市場変動リスク相当額(マーケット・リスク)および事務上のミス等によるリスク相当額(オペレーショナル・リスク)の合計です。
国内基準行では自己資本比率4%以上、国際統一基準行では8%以上という基準があります。ただし、現在の自己資本規制では、自己資本比率だけでなく、普通株式等Tier1比率やTier1比率など、複数の指標が用いられています。
また、自己資本比率規制は、国際的に統一されたルールにもとづくものであり、現在のバーゼルⅢと呼ばれる規制では、国際的に活動する銀行における自己資本比率規制の要件の一つとして自己資本比率が8%以上であることが条件となっています。
銀行を見るときのポイント
銀行を分析する際は、一般企業とは異なる視点が必要です。
例えば、
- 貸出金は増えているか
- 預金は順調に集まっているか
- 有価証券への投資額は増えているか
- 自己資本比率の変化はどうか
などを確認すると、銀行がどのように資金を運用しているかが分かります。
また、損益計算書では、
- 資金運用収益
- 資金調達費用
にも注目しましょう。
この差額が銀行の本業の収益力を表す重要なポイントになります。
さらに、銀行は金利の影響を受けやすい業種でもあります。
金利が上昇すると貸出金利が上昇し、利ざやが拡大して利益が増える場合があります。一方で、保有する債券価格の下落など、資産運用面でマイナスの影響を受けることもあるため、金利動向とあわせて決算書を見ることが大切です。
銀行の損益計算書では、一般企業とは異なる「資金運用収益」「資金調達費用」などの項目が登場します。銀行の貸借対照表についてはこちらの記事で解説しています
→銀行の損益計算書は何が違う?|決算書から収益構造と収益力を読み解く
まとめ|銀行の決算書は「資金の流れ」を見ることが重要
今回のポイントをまとめると次のとおりです。
- 銀行は「お金」を商品として扱うため、決算書の構成が一般企業と大きく異なる
- 集めた預金は負債、貸出金や有価証券は資産として計上される
- 銀行の資産は土地や建物ではなく、貸出金や有価証券などの運用資産が中心となる
- 銀行の自己資本比率は、一般企業とは算定方法が異なる
- 銀行を分析する際は、貸出金や預金の推移、資金運用収益などに注目するとよい
銀行の決算書は一般企業とは勘定科目が大きく異なるため、最初は難しく感じるかもしれません。しかし、「預かったお金をどのように運用して利益を生み出しているか」という視点で見ると、貸借対照表や損益計算書の意味が理解しやすくなります。
※本記事は企業分析の考え方を一般的に解説するものであり、特定企業への投資判断や取引を推奨するものではありません。実際の判断にあたっては、必ず最新の公式資料をご確認ください。


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