生成AIの普及によって、AIを動かすためのGPUやデータセンターなど、デジタルインフラへの需要が急速に高まっています。
その追い風を受けている企業の一つが、さくらインターネット株式会社(以下、「さくらインターネット」)です。
2027年3月期第1四半期は、生成AI向けGPUサービスの売上高が前年同期比約3.5倍と大幅に伸び、売上高、営業利益ともに第1四半期として過去最高を更新しました。
さらに、政府によるクラウドやAI基盤への支援も同社の成長を後押ししています。
この記事では、さくらインターネットの最新決算をもとに、「なぜ業績が伸びているのか」そして「政府からの支援が業績にどう影響しているのか」を決算書から読み解いていきます。
さくらインターネットとは?
さくらインターネットは、クラウドサービスやデータセンター運営などを手掛けるITサービス会社です。
クラウドサービス「さくらのクラウド」やレンタルサーバサービス「さくらのレンタルサーバ」、生成AI向けのGPUクラウドサービス「高火力」なども提供しています。
同社の大きな特徴は、国内に自社のデータセンターを保有・運営していることです。
北海道石狩市にある石狩データセンターなどを自社で運営しており、クラウドサービスを提供するためのインフラを自社で構築しています。
2026年3月には、デジタル庁におけるガバメントクラウド整備のためのクラウドサービスとして、同社の「さくらのクラウド」が国産クラウドとして初めて採択され、存在感を高めています。
2027年3月期1Qは過去最高の売上高・営業利益
それでは、2027年3月期第1四半期の業績を確認してみましょう。

売上高は前年同期比48.6%増の11,134百万円となり、第1四半期として過去最高を更新しました。
前年同期は457百万円の営業赤字でしたが、今回は1,230百万円の営業黒字に転換しています。
経常利益、親会社株主に帰属する四半期純利益もそれぞれ黒字転換しています。
さらに、好調な第1四半期の進捗を受け、会社は2027年3月期の通期業績予想を上方修正しました。
修正後の通期予想は、売上高45,500百万円、営業利益2,500百万円、経常利益2,300百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,500百万円となっています。
業績好調の最大の要因はGPUサービス
では、なぜこれほど業績が伸びたのでしょうか。
以下はセグメント別の売上高をまとめたものです。

上表のとおり、特に目を引くのが、GPUインフラストラクチャーサービスです。
2027年3月期第1四半期は、前年同期の約3.5倍となる4,718百万円まで売上高が拡大しています。
クラウドサービスやその他サービスも伸びているものの、GPUサービスほどの急成長ではありません。
つまり今回の決算を見ると、GPUインフラストラクチャーサービスの急成長が全体の売上高を大きく押し上げる、という構図になっていることがわかります。
なぜGPUサービスが急成長しているのか?
GPUインフラストラクチャーサービスの急成長の背景にあるのが、生成AIの急速な普及です。
生成AIを開発・利用するためには、大量の計算を高速に処理できるGPUが必要になります。
そのため、生成AI市場が拡大するほど、GPUを搭載したサーバーや、それを利用できるクラウドサービスへの需要も高まります。
さくらインターネットは、北海道の石狩データセンターを中心にGPUインフラを整備してきました。
2027年3月期第1四半期についても、前期に追加投資したNVIDIA H200/B200 GPUや、既存のH100 GPUの高稼働がGPUサービスの売上拡大に貢献しています。
つまり、生成AIの普及によって、
生成AIの需要拡大 → GPU需要の増加 → GPUクラウドの利用増加 → さくらインターネットの売上増加
という流れが生まれているわけです。
政府による補助金も成長を後押し
さくらインターネットの成長を考えるうえで、もう一つ重要なのが政府による支援です。
2024年、経済産業省は、生成AIの開発に必要となる計算資源を国内に整備するため、クラウド事業者などへの支援を決定しました。
その中で、さくらインターネットはAI開発用スパコン整備の補助として、最大約501億円の助成を受けるとされています。
また、「さくらのクラウド」の技術開発についても、経済産業省からクラウド開発向けとして最大6億円の補助金の拠出が発表されています。
このように、さくらインターネットは、
生成AI市場の拡大という「市場からの追い風」
に加えて、
政府によるAI・クラウド基盤整備という「政策面からの追い風」
も受けていることがわかります。
決算書にも表れる政府支援
では、こうした政府からの支援は、実際の決算書にどのように表れているのでしょうか。
2026年3月期の損益計算書を確認すると、営業外収益として「補助金収入」618百万円を計上しています。
さらに、特別利益には「国庫補助金等収入」14,312百万円が計上されています。
ここで注意したいのが、国庫補助金等収入と同額の14,312百万円が、特別損失の「固定資産圧縮損」として計上されていることです。
これは、補助金を受け取ったからといって、その金額がそのままその期の利益として残るわけではないためです。
補助金を利用して設備を取得した場合、税務上の処理などを考慮して固定資産の取得価額を圧縮する「圧縮記帳」が行われることがあります。
一見すると、圧縮記帳による特損で利益が相殺され、補助金による収益貢献がないように見えますが、圧縮記帳によって固定資産の取得価額が圧縮されるため、将来計上する減価償却費も少なくなります。
つまり、補助金14,312百万円がそのまま利益になったわけではありませんが、補助金によって設備投資の負担が軽減されることで、将来的な減価償却費の負担も小さくなるという効果があります。
このようなかたちで、政府の支援によってGPUやデータセンターなどの大型設備投資を進めるための資金負担や経費負担が軽減されていることも認識しておく必要があります。
減価償却についてはこちらの記事で解説しています
→減価償却とは?|定率法と定額法の違いをわかりやすく解説
高成長の一方で、設備投資負担も大きい
ここまで見てきたように、さくらインターネットは生成AI市場の成長によって大きく業績を伸ばしていますが、一方で、GPUやデータセンターには巨額の設備投資が必要です。
前述のとおり、政府支援によって設備投資の資金負担の一部が軽減されていますが、それでも2027年3月期第1四半期末の総資産は87,546百万円となり、2026年3月末から5,095百万円増加しています。
こうした設備投資の増加に伴って借入金も同期間で2,791百万円、リース債務(オペレーティングリース除く)も2,056百万円増加しています。
つまり、さくらインターネットのビジネスは、
GPU需要の増加 → 売上拡大 → さらにGPU・データセンターへ投資
という成長サイクルに入っている一方、設備投資に伴う資金負担も大きいビジネスモデルだといえます。
さくらインターネットの成長は今後も続くのか?
今回の決算から、今後の業績を見るうえで注目したいポイントは3つあります。
生成AI向けGPU需要が続くか
現在の業績拡大を最も強く支えているのがGPUサービスです。
前述のとおり、GPUやデータセンターには巨額の設備投資が必要ですので、生成AI市場の成長が続き、GPUの稼働率を高い水準で維持できるかが重要になります。
特に大口取引の動向は業績に大きな影響を与えるため、こうしたIRやニュースリリースには要注目です。
クラウド・ガバメント分野が成長するか
GPUサービスだけでなく、通常のクラウドサービスも安定した成長を続けています。
また、ガバメントクラウドへの採択によって、政府・自治体分野での利用拡大も期待されます。
GPUサービスの急成長だけに依存せず、クラウドサービスやガバメント分野など複数の収益源を育てられるかも、今後の重要なポイントです。
政府の補助金等支援状況
政府が掲げる「戦略17分野」には、「データプラットフォーム」や「セキュリティの確保された政府・地方公共団体のDX基盤」も含まれています。
巨額の設備投資負担を支えるという面からも、政府からの支援の動向には注目したいところです。
まとめ
さくらインターネットの2027年3月期第1四半期は、売上高111億円、営業利益12億円と好調なスタートとなりました。
特に大きく伸びたのが、生成AI向けのGPUインフラストラクチャーサービスです。
同事業の売上高は前年同期比約3.5倍と急拡大しており、業績を大きく押し上げています。
一方で、同社の成長は生成AI市場の拡大だけでなく、政府によるAI・クラウド基盤整備への支援にも支えられています。
2026年3月期の決算書を見ると、補助金収入や国庫補助金等収入が計上されており、政府支援が実際の財務諸表にも表れていることが確認できます。
今後は、GPU需要の成長が続くかだけでなく、ガバメントクラウドに採択されたクラウドサービスの成長や政府の支援策にも注目したいところです。
※本記事は企業分析の考え方を一般的に解説するものであり、特定企業への投資判断や取引を推奨するものではありません。実際の判断にあたっては、必ず最新の公式資料をご確認ください。

コメント