ドラッグストア「クスリのアオキ」を展開する株式会社クスリのアオキホールディングス(以下、「クスリのアオキ」)が、好調な業績を続けています。
2026年5月期の売上高は5,669億円となり、前期比13.0%増となりました。
クスリのアオキの特徴は、ドラッグストアでありながら、食料品の販売に力を入れていることです。
2026年5月期には、生鮮品を含めたフード部門の売上構成比が53.2%となり、売上の半分以上を食料品が占めています。
では、なぜクスリのアオキはドラッグストアでありながら、これほど食料品を強化しているのでしょうか。
この記事では、クスリのアオキの2026年5月期決算をもとに、「食料品の強化」と「M&A」という2つの特徴に注目しながら、同社が成長を続けている理由をわかりやすく解説します。
クスリのアオキとは?
まずは、クスリのアオキがどのような企業なのかを確認しましょう。
クスリのアオキは、石川県に本社を置くドラッグストアチェーンです。
北陸を中心に店舗を展開してきましたが、現在では東北、関東、東海、関西、四国などにも出店エリアを広げ、2026年5月期末時点で、ドラッグストア1,107店舗、スーパーマーケット31店舗、調剤専門薬局6店舗を展開しています。
クスリのアオキは、医薬品や化粧品だけを販売する一般的なドラッグストアとは少し異なります。
食料品や生鮮食品、日用品など、毎日の生活に必要な商品を幅広く取り扱っていることが特徴です。
同社はこうした業態を「フード&ドラッグ」と位置付け、食品の品揃えを強化しています。
また、ドラッグストアへの調剤薬局の併設も進めており、買い物と調剤を一つの店舗で済ませられる利便性も高めています。
2026年5月期決算は好調
それでは、2026年5月期の業績を見てみましょう。

2026年5月期の売上高は5,669億円となり、前期比13.0%増加しました。
営業利益は271億円で1.9%増、経常利益は277億円で0.8%増となっています。
一方、当期純利益は171億円で、前期比3.7%減少しました。
最終利益こそ減益となりましたが、売上高は大きく伸び、営業利益も増益を維持しています。
では、なぜクスリのアオキはこれほど売上を伸ばすことができているのでしょうか。
その理由を理解するうえで重要なのが、食料品の強化です。
成長ドライバーとなっている食料品
クスリのアオキの大きな特徴が、食料品の販売に力を入れていることです。
一般的なドラッグストアでは、医薬品や化粧品、日用品などが主要な商品となります。
しかし、クスリのアオキでは、食品や生鮮食品の品揃えを積極的に強化しています。
以下は、クスリのアオキの商品カテゴリ別の売上高です。

上表のとおり、生鮮品を含むフード部門の売上高が突出して高く、2026年5月期における売上構成比率は53.2%となっています。
つまり、クスリのアオキは「ドラッグストア」という名前でありながら、売上の半分以上を食料品関連の商品が占めているのです。
さらに、2026年5月期の生鮮を含むフード売上高は前年同期比17.2%増となっており、他部門よりも食料品関連の販売が大きく伸びています。
このように、食料品を積極的に取り扱うことが、クスリのアオキの成長を支える大きな特徴となっています。
なぜドラッグストアが食料品を強化するのか?
では、なぜクスリのアオキは、医薬品や化粧品ではなく、食料品をこれほど強化しているのでしょうか。
その理由の一つが、来店頻度を高める効果です。
医薬品や化粧品は、一般的には食品と比較すると購入頻度は低い傾向があります。
一方、食品は毎日の生活に必要な商品が多く、週に何度も購入する機会があります。
例えば、
「今日はクスリのアオキで牛乳を買おう」
「野菜を買いに行こう」
という目的で来店してもらうことができれば、その際に、医薬品や化粧品、日用品、衛生用品などを一緒に購入してもらえる可能性があります。
つまり、食料品を集客の入口として利用し、「ついで買い」を促すことで、店舗全体の売上を増やすことができます。
これは、医薬品や化粧品を中心とする従来型のドラッグストアとは異なる、クスリのアオキの特徴です。
食料品強化を支える「M&A」
食料品を強化するうえで、クスリのアオキが積極的に活用しているのがM&A(企業の買収・統合)です。
クスリのアオキはこれまで、地方を中心とする中小規模の食品スーパーなどの企業をグループ化してきました。
こうしたM&Aには、大きく2つのメリットがあります。
好立地の店舗を獲得できる
1つ目は、店舗を一から出店するよりも、既存の好立地店舗を獲得できることです。
新しい店舗を出店する場合、土地の確保から店舗建設、従業員の採用、顧客の獲得まで、多くの時間とコストが必要になります。
一方、既存のスーパーを買収すれば、すでに営業している店舗を引き継ぐことができます。
特に地方では、長年営業している店舗が地域住民から認知されているケースもあります。
そのため、M&Aによって店舗網を効率的に拡大できる可能性があります。
生鮮食品のノウハウを獲得できる
もう一つのメリットが、生鮮食品の販売ノウハウを獲得できることです。
医薬品や日用品と、生鮮食品では、販売に必要なノウハウが大きく異なります。
例えば、青果、精肉、鮮魚などは、商品の鮮度管理や発注、加工、売場づくりなど、専門的な知識が必要です。
また、出店地域が異なると、地場の物流会社や卸会社などとの関係構築にも時間を要することになります。
食品スーパーを運営してきた企業をグループ化することで、こうした生鮮食品のノウハウや人材を取り込むことができます。
クスリのアオキは、M&Aによって好立地の店舗や生鮮食品に関するノウハウを獲得し、「フード&ドラッグ」の店舗づくりを加速させています。
地方スーパーがM&Aを選択する背景
クスリのアオキがM&Aを進められる背景には、地方の食品スーパーを取り巻く厳しい経営環境もあります。
地方では、人口減少によって商圏そのものが縮小する可能性があります。
さらに、全国規模で店舗を展開する大手スーパーやドラッグストア、ディスカウントストアなどとの競争も激しくなっています。
こうした環境では、単独で店舗を維持し、設備投資や人材確保を続けることが難しくなるケースもあります。
そのため、地方の食品スーパーにとって、大手企業のグループに入ることは、店舗や雇用を維持しながら事業を継続するための選択肢の一つになる場合があります。
一方、クスリのアオキにとっては、M&Aによって店舗網、生鮮食品のノウハウ、人材などを獲得できます。
このように、M&Aをする側とされる側の双方にメリットが生じるケースがあることも、クスリのアオキがM&Aを進める背景の一つと考えられます。
M&Aとドミナント出店で店舗網を拡大
クスリのアオキの成長を考えるうえでは、M&Aだけでなく、出店戦略も重要です。
新しいエリアへの出店は、商圏を広げることはできますが、エリアが点在すると店舗の認知度向上が進みにくく、物流効率も悪化します。
そこで同社が採っているのがドミナント戦略です。
ドミナント戦略とは、特定の対象エリアに集中して店舗を出店することで当地での認知度や取引シェアの向上、物流の効率化などを図る店舗戦略です。
クスリのアオキでは、
- M&Aで既存店舗を取得
- 対象エリアへの集中出店
この2つを組み合わせながら店舗数を増やしてきました。
さらに同社は、2026年5月期から2030年5月期までの5年間で、400店舗の出店を目指しています。
そのうち約3割をM&Aによって補完する方針です。
つまり、今後もクスリのアオキにとって、M&Aは成長戦略の重要な手段になると考えられます。
今後の課題は「出店余地」
ここまでクスリのアオキの成長要因を見てきましたが、今後も同じペースで成長できるとは限りません。
特に注目したいのが、ドラッグストア市場の競争激化と出店余地です。
ドラッグストア業界では、各社が積極的に店舗を出店してきました。
クスリのアオキ自身も、北陸から東北、関東、東海、関西、四国へと出店エリアを広げています。
しかし、ドラッグストアの店舗数が増えれば、当然ながら同じ地域で競争する店舗も増えていきます。
また、人口減少が進む地域では、店舗を増やしても商圏人口そのものが増えるわけではありません。
そのため、今後は単純に「店舗数を増やす」だけではなく、1店舗あたりの売上高や収益性を高められるかが重要になります。
クスリのアオキが進めている食品強化や生鮮食品の充実は、こうした環境の中で既存店舗の競争力を高めるための施策とも考えられます。
決算での着目点
クスリのアオキは、今後も「フード&ドラッグ」を成長戦略の柱として掲げています。
2026年5月期から2030年5月期までの第4次中期経営計画では、2030年5月期に売上高8,000億円、営業利益440億円を目標としています。
さらに、2035年には売上高1兆円を目指す「50周年ビジョン」も掲げています。
今後の決算を見るときには、単純な店舗数だけではなく、次のような点に注目すると、クスリのアオキの成長力をより詳しく分析できます。
食品・生鮮食品の売上
同社が成長の柱と位置付ける食品や生鮮食品の売上がどれだけ伸びているのかを確認します。
食料品の販売が伸びれば、来店頻度の向上や他商品の「ついで買い」につながる可能性があります。
既存店の売上
新規出店やM&Aによって売上が増えているだけなのか、それとも既存店舗の売上も伸びているのかを確認します。
既存店の売上が伸びていれば、店舗そのものの競争力を確認する材料になります。
M&Aの効果
M&Aによって店舗数が増えるだけでなく、買収した店舗の売上や利益がどのように改善しているのかを見ることも重要です。
特に、食品スーパーから転換した店舗で、クスリのアオキの「フード&ドラッグ」のノウハウがどの程度成果を上げているのかが注目されます。
営業利益率
売上高だけでなく、営業利益率にも注目します。
店舗数を増やして売上高が伸びても、人件費や物流費、出店費用などが増えれば利益が伸びない可能性があります。
そのため、「売上高が増えているか」だけでなく、「売上高の増加が利益の増加につながっているか」を見ることが重要です。
営業利益率についてはこちらの記事で解説しています
→営業利益率とは?|会社の「稼ぐ力」を見る重要指標
まとめ|クスリのアオキはなぜ成長を続けているのか?
今回のポイントをまとめると、次のとおりです。
- クスリのアオキは2026年5月期、売上高が13.0%増加し高成長を維持
- 特徴はドラッグストアでありながら、食品・生鮮食品の売上が全体の半分強を占めていること
- 食料品を強化することで、来店頻度を高め、医薬品や化粧品、日用品などの「ついで買い」につなげる戦略を進めている
- M&Aによって好立地の店舗や生鮮食品のノウハウを獲得し、店舗網を効率的に拡大している
- 今後はドラッグストア市場の競争激化や出店余地が限られる可能性もあるなかで、既存店の競争力を高められるかが重要
クスリのアオキは、単純にドラッグストアの店舗数を増やしているだけではありません。
「食品を強化して来店頻度を高める」
→「ついで買いによって他の商品も販売する」
→「M&Aによって好立地や生鮮食品のノウハウを獲得する」
→「M&Aと新規出店によって店舗網を広げドミナント化する」
という戦略を組み合わせることで、成長を続けています。
一方で、ドラッグストア業界の競争が激しくなるなか、今後も店舗数を増やし続けるだけで成長できるとは限りません。
今後のクスリのアオキの決算を見る際には、店舗数だけではなく、食品・生鮮食品の売上、既存店の売上、M&A後の店舗の収益性、そして営業利益の伸びにも注目したいところです。
※本記事は企業分析の考え方を一般的に解説するものであり、特定企業への投資判断や取引を推奨するものではありません。実際の判断にあたっては、必ず最新の公式資料をご確認ください。


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