最近、国会では食料品の消費税減税について議論される機会が増えています。
消費税率が変更されると、私たち消費者の負担が変わることはイメージしやすいでしょう。
では、企業の利益にはどのような影響があるのでしょうか。
例えば、税抜500円で仕入れた商品を税抜1,000円で販売したとします。
このとき消費税率が10%なら、
- 売上代金:1,100円(税込)
- 仕入代金:550円(税込)
となり、手元に550円が入ります。
しかし、消費税率が1%だった場合、
- 売上代金:1,010円(税込)
- 仕入代金:505円(税込)
となり、手元に入るのは505円となります。
これだけ見ると、「消費税率が高い方が利益も増えるのでは?」と思ってしまいます。
しかし実際には、消費税率の変更そのものによって企業の利益が増減することはありません。
この記事では、
- 消費税と企業利益の関係
- なぜ税率が変わっても利益は変わらないのか
- 例外的に注意が必要なケース
について、決算書の視点から分かりやすく解説します。
結論|消費税率が変わっても利益は変わらない
先に結論から記載すると、
消費税率の変更そのものは企業利益に影響しません。
消費税は企業が負担する税金ではなく、消費者から預かった税金を企業が納付する仕組みだからです。
もちろん、
- 消費税増税による消費の落ち込み
- 消費税減税による消費の回復
などを通じて業績が変化する可能性はあります。
しかし、それは税率変更による消費行動の変化であり、消費税そのものが利益を増減させているわけではありません。
消費税は企業の売上ではない
まず理解したいのは、消費税は企業の売上ではないということです。
消費税は、商品の購入やサービスの利用などに対して課税される税で、消費者が負担し、企業が消費者から預かった消費税をまとめて所管税務署へ納付します。
つまり企業は、
「税金を一時的に預かっているだけ」
の立場なのです。
このように、税の負担者と納税義務者が異なる税を間接税といいます。
企業が納める消費税の計算方法
企業は売上時に受け取った消費税の全額を納税するわけではありません。
仕入や経費で支払った消費税を差し引くことができます。
この仕組みを、仕入税額控除といいます。
例えば、
- 売上で受け取った消費税:100万円
- 仕入や経費で支払った消費税:70万円
であった場合、
納税額は、100万円-70万円=30万円です。
受け取った消費税と支払った消費税の差額を納税すればよいので、企業は損も得もしないことになります。
つまり、税率が1%でも10%でも、納税する消費税の額が変わるだけで、企業に残る利益は変わりません。
なお、受け取った消費税より支払った消費税の方が多い場合は還付を受けられることもあります。
例外|非課税売上が多い企業は注意
ただし、支払ったすべての消費税が必ず控除できるわけではありません。
代表例が、
- 金融業
- 住宅賃貸を中心とする不動産賃貸業
です。
有価証券の譲渡や利子、住宅の賃貸料などは非課税取引となりますので、これらの業種では非課税売上が多く発生します。
非課税売上の割合が高い企業では、支払った消費税の全額を控除できない場合があります。
その結果、控除できなかった消費税が実質的なコストとなり、利益に影響することがあります。
決算書ではどう見るのか
企業が公表する損益計算書ですが、上場企業の多くは税抜経理方式を採用しています。
そのため、
- 売上高
- 売上原価
- 販管費
などには消費税が含まれていません。
例えば、税込1,100円で販売した商品も、損益計算書上では、「売上高1,000円」として計上されます。
つまり、企業分析を行う際は、
消費税を除いた本来の収益力が表示されている
ことになります。
損益計算書の見方はこちらの記事で解説しています
→損益計算書の読み方|最初に見る3つの利益
まとめ|消費税は企業の利益ではない
今回のポイントをまとめると次のとおりです。
- 消費税率の変更そのものは企業利益に影響しない
- 企業は受け取った消費税から支払った消費税を差し引いて納税する
- 非課税売上が多い企業では例外的に利益に影響する場合がある
- 損益計算書の売上高や費用は税抜き表記
消費税率が高くなると企業が受け取るお金も増えるように見えますが、その増加分は最終的に国や都道府県へ納める税金です。
そのため、消費税率の変更そのものが企業利益を押し上げたり押し下げたりするわけではありません。
決算書を読む際も、消費税と利益は別物として考えることが大切です。
※本記事は決算書や税務の一般的な考え方を解説するものであり、個別の税務判断を行うものではありません。実際の取り扱いについては税理士等の専門家へご確認ください。


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