企業価値やDCF法について調べていると、「現在価値」という言葉が出てきます。
しかし、
- 現在価値とは何か?
- なぜ将来のお金を現在の価値に換算する必要があるのか?
と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。
実は、現在価値はDCF法を理解するうえで欠かせない考え方です。
この記事では、
- 現在価値とは何か
- なぜ将来のお金と現在のお金の価値が違うのか
- 割引率とは何か
- 将来のお金を現在価値に換算する方法
について、具体例を使って分かりやすく解説します。
結論|現在価値とは「将来のお金を今の価値に換算した金額」
先に結論からいうと、現在価値とは、将来受け取るお金を現在時点の価値に換算した金額です。
例えば、
- 今すぐ100万円を受け取る
- 1年後に100万円を受け取る
この2つは、一見すると同じ100万円ですが、
実は、現在の100万円と1年後の100万円は同じ価値ではありません。
理由は、お金には時間的な価値があるからです。
今100万円を持っていれば、そのお金を運用することで将来増やすことができます。
一方、1年後に100万円を受け取る場合は、今から1年間、その100万円を運用することはできません。
そこで、将来受け取るお金は「今の価値にしたらいくらになるのか」を換算します。
これが現在価値の考え方です。
なぜ今の100万円と1年後の100万円は違うのか
現在価値を理解するために、まずお金の「時間価値」について考えてみましょう。
例えば、今100万円を持っているとします。
この100万円を年1%の金利で運用すると、1年後には、
となります。
つまり、今の100万円は、1年後には101万円になる可能性があります。
反対に考えると、「1年後の101万円」は「今の100万円」と同じ価値、と考えることができます。
では、1年後に100万円を受け取る場合はどうでしょうか。
今100万円を持っている場合と比べると、1年後の100万円は運用する時間がない分だけ価値が低くなります。
そこで、将来のお金を現在の価値に戻して考えます。
1年後の100万円を現在価値に換算する
例えば、1年後に100万円を受け取るとします。
このとき、割引率を1%とすると、現在価値は、100万円÷(1+1%)=99万99円
となります。
つまり、
1年後の100万円=現在の約99万
ということです。
これは、現在99万99円を1%で1年間運用すると、1年後に100万円になる、という意味です。
このように、将来受け取るお金を現在の価値に換算することを割り引くといいます。
「割引率」とは何か
現在価値を計算するときに使う利率を割引率といいます。
先ほどの例では、1%が割引率です。
現在価値を考える際には、将来のお金をどの程度の利率で現在に割り戻すかを決める必要があります。
この利率には、金利だけでなく、投資に伴うリスクなどさまざまな要素が関係します。
DCF法では、企業の資金調達コストなどを考慮して割引率を設定しますが、具体的な考え方については別の記事で詳しく解説します。
例えば、1年後の100万円について考えてみましょう。
| 割引率 | 現在価値 |
|---|---|
| 1% | 約99.0万円 |
| 3% | 約97.1万円 |
| 5% | 約95.2万円 |
| 10% | 約90.9万円 |
割引率が高くなるほど、将来の100万円を現在の価値に換算した金額は小さくなります。
つまり、将来のお金に対する割引が大きくなるということです。
複数年後のお金はどう考える?
ここまでの例では1年後のお金について考えました。
では、2年後、3年後のお金はどうでしょうか。
例えば、現在100万円を年1%で運用するとします。
1年後には、
100万円 × 1.01 = 101万円
になります。
さらに2年目も1%の利息が付くため、2年後には、
101万円 × 1.01 = 102万100円
となります。
このように、利息にさらに利息が付く複利によって、お金は時間とともに増えていきます。
一般化すると、元本をx円、利率をr、運用期間をn年とした場合、n年後の金額は、
となります。
将来のお金を現在価値に戻す
今度は逆に考えてみましょう。
「割引率をrとした場合、n年後に受け取るお金が、現在の価値ではいくらなのか?」
を計算します。
先ほどの複利計算を逆にすればよいので、
という式で現在価値を求めることができます。
例えば、2年後に100万円を受け取る場合、割引率を1%とすると、
100万円÷(1+1%)^2=98万296円
となります。
つまり、2年後の100万円は、現在の約98万円と同じ価値ということです。
1年後の場合は約99万円でしたが、2年後になると約98万円まで現在価値が小さくなります。
これは、時間が長くなるほど、その間にお金を運用できる期間も長くなるためです。
現在価値を計算するポイント
現在価値を考えるときは、主に次の3つが重要です。
将来いくら受け取るのか
将来受け取る金額が大きいほど、現在価値も大きくなります。
いつ受け取るのか
受け取る時期が遠くなるほど、現在価値は小さくなります。
割引率を何%にするのか
割引率が高くなるほど、現在価値は小さくなります。
つまり、
将来の金額・受け取るまでの期間・割引率
の3つの要素によって、現在価値は決まります。
なぜ企業分析で現在価値が重要なのか
現在価値は、企業分析でも重要な考え方です。
企業は1年間だけ事業を行うわけではありません。
将来にわたって、
- 売上を上げる
- 利益を生み出す
- キャッシュフローを生み出す
ことが期待されます。
しかし、例えば、
「10年後に100億円のキャッシュフローを生み出す会社」
と、
「今すぐ100億円のキャッシュを持っている会社」
を単純に同じ価値として考えることはできません。
将来のお金には、受け取るまでの時間があるからです。
そこで、将来生み出すキャッシュフローを現在価値に換算する必要があります。
これが、前回の記事で紹介したDCF法につながります。
DCF法では将来のFCFを現在価値に換算する
DCF法では、企業が将来生み出すと予想されるフリーキャッシュフロー(FCF)を、それぞれ現在価値に換算します。
例えば、
- 1年後のFCF
- 2年後のFCF
- 3年後のFCF
- 4年後のFCF
というように、将来のキャッシュフローを予測します。
そして、それぞれを割引率によって現在価値に換算し、その合計から企業の事業価値を求めます。
つまりDCF法は、
「将来どれだけキャッシュを生み出すのか」
だけではなく、
「そのキャッシュがいつ生み出されるのか」
も考慮して企業価値を計算する方法なのです。
DCF法については、こちらの記事で解説しています。
→企業価値(EV)とは?|時価総額との違いやDCF法をわかりやすく解説
まとめ|お金には「時間の価値」がある
今回のポイントをまとめると、次のとおりです。
- 現在価値とは、将来のお金を現在時点の価値に換算した金額
- お金には金利によって増える「時間的な価値」がある
- 現在価値を計算するときに使う利率が「割引率」
- 遠い将来ほど、また、割引率が高いほど、現在価値は小さくなる。
- DCF法では、将来のFCFを現在価値に換算して企業価値を求める
現在価値は、一見すると難しい金融用語に感じるかもしれません。
しかし、
「将来のお金を、今の時点ではいくらの価値なのかに換算する」
と考えると、理解しやすくなります。
企業分析では、現在の利益やキャッシュフローだけを見るのではなく、将来生み出すお金を現在価値に換算して考えることがあります。
前回の記事で紹介したDCF法を理解するためにも、現在価値の考え方は非常に重要です。
※本記事は企業分析の考え方を一般的に解説するものであり、特定企業への投資判断や取引を推奨するものではありません。実際の判断にあたっては、必ず最新の公式資料をご確認ください。


コメント