損益計算書を見ると、「減損損失」という項目が計上されていることがあります。
減損損失は、企業が過去に行った投資が期待した収益を生まないと判断された場合に計上される損失です。
大きな金額が計上されることも多いため、企業の業績に大きな影響を与える場合があります。
この記事では
- 減損損失の基本
- 減損の対象となる資産
- 減損損失が発生するケース
- 企業分析で見るときのポイント
について解説します。
減損損失とは
減損損失とは、
既に投資した固定資産などが期待どおりの利益を生まないことが明らかになった場合に、その差額を損失として計上し、資産価値を引き下げる会計処理
のことをいいます。
企業は設備投資や店舗出店などを行う際、将来の収益を見込んで投資を行います。
しかし、事業環境の変化や業績悪化などによって、当初想定していた収益が見込めなくなる場合があります。
このような場合には、資産の帳簿価額を実態に合わせて引き下げ、その差額を減損損失として計上します。
減損に当たっては、企業会計基準適用指針第6号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」に照らし、減損判定や減損損失の計上額を決定します。
減損の対象となる資産
減損の対象となるのは、主に固定資産です。
具体的には、次のような資産が対象となります。
- 建物や機械、器具備品などの有形固定資産
- ソフトウェア、営業権(のれん)などの無形固定資産
- 長期前払費用などの投資その他の資産
このように、減損の対象は設備などの有形資産だけではなく、無形固定資産や投資その他の資産も含まれる点に注意が必要です。
減損を行う資産のグルーピング
減損損失は、会社全体の収支が悪化した場合にだけ発生するわけではありません。
減損の判定は、他の資産からおおむね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位をグルーピングし、そのグルーピングの単位で減損を実施するかを判定します。
グルーピングは例えば、次のような単位となります。
- 小売や飲食店の店舗単位
- 支店や営業所、工場の単位
- 部署や事業部の単位
ただし、企業によっては、エリア戦略として同一エリア複数店舗を出店し、一部の店舗は集客拠点として機能しているといったケースがあります。
このような場合、個店単位ではなく当該エリア全体をグルーピング単位とし、減損判定を行うケースもあります。
減損損失計上の判定
減損の兆候がある場合には、当該資産について、減損損失を認識するかどうかの判定を行います。
減損の兆候とは、例えば以下のような場合を指します。
事業の損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナスの場合
資産が使用されている事業の損益が2期継続して赤字となっているか、もしくは、継続して赤字となる見込みである場合、減損の兆候となります。
使用範囲又は方法について回収可能価額を著しく低下させる変化がある場合
- 資産が使用されている事業を廃止、または大幅縮小するなどの方針変更があった場合
- 資産の稼働率が著しく低下した状態が続いており、回復する見込みがない場合
- 資産の著しい陳腐化等の機能的減価が観察できる場合
このような場合は、減損の兆候となります。
経営環境の著しい悪化の場合
資産が使用されている事業について、
- 材料価格の高騰や、価格・サービス料金の大幅な下落、販売量の大幅な減少などが続いているような市場環境の著しい悪化
- 技術革新による著しい陳腐化や特許切れによる重要な関連技術の拡散などの技術的環境の著しい悪化
- 規制緩和や規制強化などの法律的環境の著しい悪化
など、経営環境が著しく悪化したか、又は、悪化する見込みである場合は減損の兆候となります。
市場価格の著しい下落の場合
資産の市場価格が50%程度以上下落するなど著しく下落したときは、減損の兆候となります。
減損損失の判定と損失額
減損の兆候がある資産について、当該資産から得られるであろう収益の総額が当該資産の帳簿価額を下回る場合には、減損損失を認識することになります。
減損損失を認識すべきと判定された資産は、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、この減少額を減損損失として特別損失に計上します。
回収可能価額は、
- 正味売却価額
- 使用価値
のいずれか高い方の金額となります。
通常、使用価値は正味売却価額より高いと考えられるため、当該資産が中古流通市場があるなどして明らかに正味売却価額が高いと想定される場合や、資産の処分がすぐに予定されている場合などを除き、使用価値をベースに回収可能額を算出します。
正味売却価額
正味売却価額とは、資産を売却した際に得られる見込み価格から、販売に必要な直接経費を差し引いた金額です。
使用価値
使用価値は、資産の継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値により算出します。
将来キャッシュ・フローは、当該事業の経営環境や資産の現在の使用状況、合理的な使用計画等を考慮して企業が合理的に見積もります。
企業分析で見るときのポイント
減損損失は現金流出を伴わないことから、必ずしも企業の資金繰りを悪化させるものではありません。
また、減損によって資産価額が引き下げられると、その後の減価償却費負担が軽減されることになります。
減価償却については、こちらの記事で解説しています
→減価償却とは?|定率法と定額法の違いをわかりやすく解説
そのため、減損計上の翌期は利益が改善したように見える場合がありますが、事業の収益力そのものが改善したとは限らない点に注意が必要です。
減損損失が発生している場合には、
- 事業の収益性が明確に低下している
- 事業環境が明確に悪化している
など、明らかな理由があります。
また、固定資産は一般的に時間の経過とともに劣化する資産です。
仮に設備の陳腐化対策として追加投資をしても、それが業績改善に繋がらなければ、その資産は投資したそばから減損の対象となってしまいます。一方で、このような減損発生を懸念して追加投資を抑制した結果、既存設備の劣化が進み、さらなる業績悪化を招くという悪循環が生じる可能性にも注意が必要です。
そのため、減損が発生している事業では、
- 今後さらに収益が低下する可能性
- 追加の減損損失が発生する可能性
にも注意する必要があります。
企業分析では、減損損失の金額だけでなく、
- どの事業で減損が発生しているか
- どの資産が対象となっているか
といった点も確認することが重要です。
まとめ
減損損失とは、
既に投資した固定資産などが期待どおりの利益を生まないことが明らかになった場合に、その差額を損失として計上する会計処理
のことをいいます。
減損の対象は、
- 建物や設備などの有形固定資産
- ソフトウェアや営業権などの無形固定資産
- 長期前払費用などの投資その他の資産
など幅広い資産が含まれます。
減損損失は、会社全体ではなく事業単位や店舗単位などのグルーピング単位で判定されます。
減損損失は、明らかな収益低下、経営環境の悪化が見られないと実施されることはないため、減損損失の計上した会社の企業分析では、減損損失の対象となる事業や範囲を確認し、企業の収益力をより正確に把握することが重要です。
収益性の分析については、こちらの記事で解説しています
→決算分析における収益性とは|「きちんと利益を残せている会社か」を見る
※本記事は企業分析の一般的な考え方を解説するものであり、特定企業への投資判断や取引を推奨するものではありません。実際の判断にあたっては、必ず最新の公式資料をご確認ください。


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