企業の成長性を分析する際、多くの場合は決算書の数字に注目します。
例えば
- 売上高の成長率
- 利益の伸び
- 利益率の改善
などです。
しかし、企業の将来の成長性を考えるうえでは、決算書の数字だけでは十分とはいえません。
なぜなら、企業の成長は
- 業界の成長性
- 競争環境
- 事業構造
など、外部環境にも大きく左右されるためです。
そのため企業分析では、決算書だけでなく事業環境を分析する視点も重要になります。
そこで役立つのが、経営戦略の分野で使われているフレームワーク分析です。
この記事では、企業の成長性を分析する際に役立つ代表的なフレームワークとして
- 3C分析
- SWOT分析
- 5F分析
- PPM分析
を紹介します。
企業の成長性は「会社」と「業界」の両方を見る
企業の成長性を判断する際には、次の2つの視点が重要です。
会社そのものの成長性
- 商品力・技術力
- ブランド力
- ビジネスモデル
- 経営戦略
など、その企業自身の強みです。
業界の成長性
企業がどれだけ優れた商品や技術により高いシェアを持っていても、
業界そのものが縮小する場合は成長が難しくなることがあります。
例えば
- フィルムカメラ
- DVDレンタル
などの業界は、代替商品の登場によって市場自体が縮小しました。
そのため企業分析では、「企業の強さ」と「業界の成長性」の両方を考えることが重要です。
こうした分析に役立つのが、経営戦略のフレームワークです。
3C分析|市場・競合・自社の3つから事業環境を見る
3C分析とは
- Customer(市場・顧客)
- Competitor(競合)
- Company(自社)
の3つの視点から事業環境を分析するフレームワークです。
企業の置かれている状況を客観的に整理するために使われます。

それぞれの視点は次の通りです。
Customer(市場・顧客)
市場の規模や成長性、顧客ニーズを分析します。
例えば
- ターゲット市場は拡大しているか
- 顧客のニーズは変化しているか
などを確認します。
Competitor(競合)
競争相手の強さや競争状況を分析します。
例えば
- 強い競合企業はいるか
- 価格競争が激しい業界か
などを確認します。
Company(自社)
その会社が持つ強みや弱み、マーケットでの立ち位置などを整理します。
例えば
- 技術力、ブランド力
- コスト競争力
- シェア率
などです。
この3つを整理することで、企業が取り巻く環境と自社の立ち位置を把握することができます。
SWOT分析|外部要因から事業機会やリスクを分析する
市場における機会と脅威に対して、その会社の強みと弱みから、どのような事業機会やリスクがあるかを整理、分析するフレームワークです。
SWOT分析は、3C分析などで整理した外部環境や自社の状況をもとに、機会とリスクを整理する際にも活用されます。

強み(strength)
その会社自体が持つ強み、優位性を分析します。
弱み(weakness)
その会社自体が持つ弱み、劣後しているポイントを分析します。
機会(opportunity)
外部環境の変化による事業拡大の機会を分析します。
脅威(threat)
外部環境の変化による事業に与えるリスクを分析します。
事業リスクについては、有価証券報告書の「事業の状況」のなかに「事業等のリスク」として記載されているので、参考になるかと思います。
これらを整理、分析することで、
外部要因の機会と脅威に対して、その会社の強みを活かせるか、リスクにどのように対処するか、などを把握することができます。
5F分析|業界の収益構造を分析する
5F分析(ファイブフォース分析)は、
業界の競争環境を分析するためのフレームワークです。

これは
- 業界内の競合
- 売り手の交渉力
- 買い手の交渉力
- 新規参入の脅威
- 代替品の脅威
という5つの力(Forces)から、業界の収益力や競争構造を分析します。
業界内の競合
同業他社との競争の激しさです。
競争が激しい業界では、価格競争によって利益率が下がりやすくなります。
逆に、独占や寡占の状態だと、利益率は安定しやすい、ということがいえます。
売り手の交渉力
原材料や部品などを供給する企業の交渉力です。
売り手の独占的技術を有しているなど力が強いと、原材料価格など仕入れコストが上昇しやすくなります。
買い手の交渉力
顧客の交渉力です。
例えば、強い販売力をもった大口の得意先からの受注は、販売価格の値下げ圧力が強くなりやすくなります。
新規参入の脅威
新しい企業が参入しやすい業界かどうかです。
例えば飲食業など参入障壁が低い業界では、競争が激しくなりやすくなります。
代替品の脅威
同じニーズを満たす別の商品やサービスです。
5つの力のなかで、特に重要なのが代替製品の存在の有無です。
なぜなら、技術革新等によって新しい商品やサービスが登場すると、
それまでのビジネスモデルでの競争優位性が一気に崩れることがあるからです。
例えば
- 動画配信サービスの普及によるレンタルDVD市場の縮小
- スマートフォンの普及によるデジタルカメラ市場の縮小
などです。
このように5F分析を行うことで、その会社やビジネス環境を理解することができます。
これらの競争力は、企業の収益性の高さにも直結します。
企業の収益性についてはこちらの記事で解説しています。
→決算分析における収益性とは|「きちんと利益を残せている会社か」を見る
PPM分析|事業ポートフォリオを整理する
PPM分析(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)は、
企業の事業や製品を整理するためのフレームワークです。
この分析では、
- 市場成長率
- 市場占有率(シェア)
の2つの軸を使い、事業を次の4つに分類します。

花形
市場成長率が高く、シェアも高い事業です。
将来の成長が期待される事業ですが、成長のために投資も必要になります。
金のなる木
市場の成長は低いものの、高いシェアを持つ事業です。
安定的に利益やキャッシュを生み出す事業といえます。
問題児
市場成長率は高いものの、シェアが低い事業です。
将来の成長が期待できる一方で、投資判断が重要になります。
負け犬
市場成長率もシェアも低い事業です。
企業によっては撤退の対象になることもあります。
このようにPPM分析を使うことで、企業の事業構造や成長事業を整理することができます。
ただし、PPM分析は市場成長率とシェアの2つの指標に依存するため、実際の企業分析では収益性や競争優位性など他の要素もあわせて判断することが重要です。
まとめ
企業の成長性を分析する際には、決算書の数字だけでなく事業環境の理解も重要です。
その際に役立つのが、経営戦略のフレームワークです。
代表的なものとして
- 3C分析:市場・競合・自社の3つの視点で事業環境を分析
- SWOT分析:外部要因からの成長機会やリスクを分析
- 5F分析:業界の競争環境や収益構造を分析
- PPM分析:事業ポートフォリオを整理する
などがあります。
これらのフレームワークを活用することで、
企業の強みだけでなく、業界環境や競争構造まで含めた成長性分析
が可能になります。
企業分析では、決算書の数字とあわせてこうした視点も取り入れることで、より立体的に企業の将来性を理解することができます。
決算書の数字から読み取れる企業の成長性についてはこちらの記事で解説しています
→企業の成長性はどう見る?|決算書でわかる成長企業の見分け方
※本記事は決算書の読み方を一般的に解説するものであり、特定企業への投資判断や取引を推奨するものではありません。実際の判断にあたっては、必ず最新の公式資料をご確認ください。


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