増収減益とは、売上高は増加しているにもかかわらず、利益が減少している状態をいいます。
増収減益は、必ずしも悪いとは限りません。
しかし、その中身によっては企業の競争力低下を示す重要なサインになります。
- 粗利率が下がっていれば「競争力低下」の可能性
- 販管費増なら「先行投資かコスト増か」を確認
- 特別損失なら「一時的か」を見極める
この記事では、増収減益の決算において、注意すべき点、確認すべき点などを
わかりやすく解説していきます。
なお、増収減益の逆のパターン、「減収増益」についてはこちらの記事で解説しています
→減収増益とは?|売上が減っても利益が伸びる理由を企業分析の視点で解説
増収減益はなぜ起きる?主な3つの原因
一見すると「売上が伸びている=順調」に見えますが、
利益が減っているということは、売上以上にコストが増えているということです。
増収減益が起きる主な理由は次の3つです。
- 原価率の上昇
- 販管費の増加
- 特別損失の計上
増収減益の決算で最初に見るべきポイント
ひとくちに減益といっても、見るべき利益には段階があります。
- 売上総利益(粗利)
- 営業利益
- 経常利益
- 当期純利益
このうち、企業分析の初動としては、本業の利益を示す営業利益に着目します。
このとき、営業利益の額だけでなく、営業利益率が低下していないかも確認が必要です。
営業利益(率)が落ちている場合、その理由が
- 粗利率の低下なのか
- 販管費コストの増加なのか
- その両方なのか
を確認していきます。
企業の収益性についての見方はこちらで解説しています
→決算分析における収益性とは|「きちんと利益を残せている会社か」を見る
売上総利益率(粗利率)が低下している場合
売上総利益率(粗利率)が低下している場合、以下の理由が考えられます。
原材料価格の上昇
仕入価格や資材価格が上昇している場合、価格転嫁できなければ粗利は圧迫されます。
価格転嫁ができていないというのは、その会社の商品・サービスの競争力が強くない、ということが言えます。
競争環境の激化
競合他社との競争激化により値下げ販売を強いられる場合、
売上は増えても、粗利率が下がることになるので注意が必要です。
このケースも、その会社の商品やサービスの競争力が相対的に低下している兆候と言えます。
戦略的な販売促進
新商品や新サービスの投入において、
新たな市場シェアを一気に獲得することや、認知度UPに向けた先行投資のため、
戦略的に販促強化を行っている場合は、一時的に粗利が減少することがあります。
この場合、戦略が成功すれば、将来的に大きな成長に繋がることもあります。
例えばQRコード決済のPayPayは、市場シェア獲得のため大規模なポイント還元を実施し、
一時的な赤字を容認して普及を進めました。
販管費増加による場合
粗利率は維持、またはプラスにもかかわらず営業利益が減少している場合、
販管費の増加が要因と考えられます。
ここで重要なのは、販管費の中身を見ることです。
人件費の増加
昨今は人件費の上昇が顕著です。
賃上げや人材確保コスト増により、利益が圧迫されている企業も少なくありません。
優秀な人材確保は、企業成長にきわめて重要なので、単純に人件費増=悪いことではありません。
ただし、業務のDX化など生産性向上への取り組みが不十分な会社は、
人件費増がいつまでも重荷となり、いずれ競争力を失ってしまう可能性があるので注意が必要です。
物流費・販売費の増加
物流費の高騰や広告宣伝費の増加も、利益圧迫要因になります。
特に、物流費は直接的な原価に近いものなので、価格転嫁できていない場合は、
その会社の商品・サービスの競争力が強くないということが言えます。
販売費や広告宣伝費も同様のことが言えますが、
前述の「戦略的な販売促進」の場合には、販管費や広告宣伝費が増加する場合もあるので、
中身をよく見ていく必要があります。
戦略的な販売促進が奏功するか否かの見極めは、ユニットエコノミクスという指標がヒントになります。
ユニットエコノミクスについてはこちらの記事で解説しています
→ユニットエコノミクスとは?|LTVとCACからビジネスの採算性を判断する指標をわかりやすく解説
店舗展開型ビジネスの場合のチェックポイント
外食や小売など、他店舗展開している業態では、
店舗数の推移も重要な分析材料になります。
無理なペースで出店を加速している場合、
- 店舗同士が競合する「カニバリゼーション」
- 従業員育成が追いつかない
といった問題が発生することがあります。
結果として、
売上は増えているが、1店舗あたりの収益性は悪化
=増収減益
という状況が起こります。
これは注意が必要な兆候です。
多店舗展開している会社は、決算説明会資料などで、既存店売上と全体売上を分けて売上や利益を掲載している場合もあるので、既存店売上が大きく低下している場合には、注意が必要です。
これらを公表していない場合でも、店舗数の増減はホームページなどで確認できることがあるので、1店舗当たりの売上高が下がっていないかを確認していくことが重要です。
特別損失による大幅減益の場合
これまでは、売上高が増加、営業利益が減少の場合を見てきましたが、
特別損失に多額の損失が計上され、当期純利益が大きく減少(または赤字)となる場合もあります。
特別損失は一過性の原因によるものも多いので、中身をよく確認する必要があります。
災害損失
地震や水害などの天災、または火災などの事故による損害です。
通常、企業は保険に加入しているので直接的な費用負担は大きくない場合がありますが、
復旧までの間、施設が稼働できず売上減少に繋がる可能性があるので、
影響が長期化する場合は注意が必要です。
減損損失
減損損失とは、既に投資した固定資産などが、期待通りの利益を生まないことが明らかとなった場合、その差額を損失として計上し、資産価値を引き下げる会計処理です。
減損損失は実際の現金流出を伴う損失ではなく、計上後は減価償却負担が減ることで利益改善につながる場合もあるので、悪いことばかりではありませんが、一般に固定資産は経年とともに劣化するため、さらなる利益の低下には注意が必要です。
減損損失についてはこちらの記事で解説しています
→減損損失とは?|企業分析で知っておきたい会計処理をわかりやすく解説
リストラによる損失
事業整理や人員整理などのリストラを行う場合、
その事業の資産を除却したり、早期退職に伴う退職金積み増しの支払い負担を特別損失として計上することがあります。
事業構造改革が成功すれば、次年度以降の業績の改善が期待できますが、
会社延命のための人員整理など、しっかりとした事業改革を伴わないリストラの場合、
優秀な人材が流出し、さらなる業績悪化を招く場合もあるので注意が必要です。
増収減益は悪いこと?
上述のとおり、増収減益が必ずしも悪いとは限りません。
例えば、
- 将来を見据えた先行投資
- 事業の構造改革のための一時的な損失
など、意図的な先行投資や損切りであれば、将来の利益拡大につながる可能性があります。
一方で、
- 競合対応のための安易な値下げ
- 無理な出店加速による既存店売上の低下
などの場合には、今後も収益減少傾向が継続、拡大する可能性があるので注意が必要です。
重要なのは、
コスト増が一時的なものか、
それとも構造的な問題か
を見極めることです。
まとめ
増収減益は、必ずしも悪いとは限りませんが、
内容によっては企業の競争力低下を示す重要なサインとなります。
企業分析では、
- 粗利率は下がっていないか
- 営業利益率はどうか
- 特別損失の内容はどうか
- コスト増は一時的か構造的か
- 競争力は維持できているか
を順に確認していきます。
売上の伸びだけを見るのではなく、
利益の質と収益構造を見ることが重要です。
企業の成長性についての見方はこちらで解説しています
→企業の成長性はどう見る?|決算書でわかる成長企業の見分け方
※本記事は決算書の読み方を一般的に解説するものであり、特定企業への投資判断や取引を推奨するものではありません。実際の判断にあたっては、必ず最新の公式資料をご確認ください。


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