債務償還年数とは、会社の借金を現在の利益水準で返済すると何年かかるかを示す指標です。
計算方法や健全だと判断できる目安、注意が必要な目安について、金融機関からの視点も交えて、
わかりやすく解説していきます。
借金が「多すぎるか」をどう判断するか
会社が事業活動を行うにあたり、融資を受けることはつきものですが、
借金は文字通り借りたお金なので返済できることが前提となります。
では、借金が多いか、少ないかはどのように判断すればよいでしょうか。
これは単に、借金の金額だけを見ても、判断はできません。
大切なのは、
その借金を、今の利益水準で返せるのかどうか
という視点です。
そこで使われる代表的な指標が、債務償還年数です。
債務償還年数とは
債務償還年数とは、
現在の借金を、現状の利益水準で返済するとしたら、何年かかるか
を表す指標です。
言い換えると、
「この会社は、今の稼ぐ力のままで、借金を何年で返し終えられるか」
を見るものです。
債務償還年数の計算式
債務償還年数の計算式には、
簡便的なものから、より実態に近づけたものまで、
いくつかの考え方があります。
ここでは、代表的な2つの計算方法を紹介します。
簡便的な計算式
まず、もっともシンプルな計算方法です。
債務償還年数(年)
=(有利子負債 - 現預金) ÷(当期純利益 + 減価償却費)
この式の分子では、
・有利子負債:銀行借入や社債など、利息のつく借金
・現預金:すぐに返済に使えるお金
を差し引いた、
ネット(正味)の借金(ネット有利子負債)が、どれくらいあるかを見ています。
つまり、「今すぐ返そうと思えば、実質いくら借金が残るか」を見ているイメージです。
なぜ「当期純利益+減価償却費」なのか
分母に使う
「当期純利益+減価償却費」は、
返済に回せるお金の目安です。
当期純利益は特別損益の影響を受けるため、
実務では、営業利益+減価償却費(EBITDA)や営業キャッシュフローベースで算出することもあります。
減価償却費は、損益計算書上は費用ですが、
実際にはお金が出ていかない費用です。
そのため、「当期純利益+減価償却費」を足し合わせて、
返済に使える資金として考えます。
減価償却についてはこちらの記事で詳しく解説しています
→減価償却とは?|定率法と定額法の違いをわかりやすく解説
運転資金を控除した計算式
次に、より実態に近づけた考え方です。
債務償還年数(年)
=(有利子負債 - 現預金 - 運転資金※) ÷(当期純利益 + 減価償却費)
この式の分子では、
運転資金を借金から差し引いています。
※運転資金=売掛債権 + 棚卸資産 - 仕入債務
運転資金とは何か
運転資金とは、
「仕入代金の支払い」から「売上代金の回収」までの間に発生する、
一時的な資金負担のことです。
運転資金は事業を継続する限り常に必要となる資金であり、全額を返済原資に回すことはできません。そのため、より実態に近づける場合は、借入金から控除して考える、
というのがこの計算式の考え方です。
運転資金についての詳細な説明はこちらに記載しています
→運転資金とは|「売れるまでに一時的に必要となるお金」
債務償還年数の目安はどれくらいか
債務償還年数の一般的な目安としては、
- 5年以内:健全な水準
- 10年超:借入過多と見なされることが多い
と言われています。
ただし、設備投資型の業種では7〜8年程度でも十分許容されるケースがあります。
10年を超えると、景気後退などで利益が減少した場合に返済期間がさらに長期化するリスクが高まります。
また、減価償却費を含めた利益が赤字の場合は、そもそも債務償還年数は算出できず、
借入返済能力に大きな課題があるに大きな課題があると判断されます。
なお、銀行借入などの有利子負債がない状態で経営していることを無借金経営といいますが、
無借金経営のメリット・デメリットについては別記事にまとめているので、
こちらをご覧ください。
→無借金経営は本当に安全?|メリット・デメリットを解説
債務償還年数は銀行が重視する指標のひとつ
債務償還年数は、
銀行や金融機関が、企業を評価する際に実際に注視している指標のひとつです。
債務償還年数が10年を超える場合は、単に借入が多すぎる、というだけでなく、
銀行から「要注意先」と分類される可能性が出てきます。
要注意先と分類されると、銀行は一定の貸倒引当金を積む必要があるため、
追加融資のハードルが高くなります。
つまり、会社にとっては、資金調達の余力が小さくなってくることになりますので、
経営上、黄色信号の状態と考えられます。
まとめ
債務償還年数は、「借金があるかどうか」ではなく、「借金を返せるかどうか」を見る指標です。
- 5年以内:健全といえる水準
- 10年超:借入過多とみなされる水準
企業の安全性分析では、これらを単独で見るのではなく、
- 自己資本比率(会社の財務体力)
- 流動比率(短期の支払い余力)
などと組み合わせて総合判断することが重要です。
企業の安全性の分析はこちらの記事で解説しています
→決算分析における安全性とは|財務の安定性から会社の体力を見極める
※本記事は企業分析の基礎知識を解説するものであり、特定企業への投資判断を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。


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