借金がなく経営ができている、と聞くといい会社だと感じるかもしれませんが、
会社を経営するに当たり、無借金というのは必ずしも最適とは限りません。
短期的な安定性は高い一方で、資金調達力や成長機会を損なうリスクもあります。
今回の記事では、無借金経営のメリット・デメリットについて、わかりやすく解説していきます。
無借金経営とは
無借金経営とは、
銀行借入や社債などの有利子負債がない状態で経営していることをいいます。
運転資金や設備資金などを、
すべて資本金や内部留保などの自己の資金で賄える状態なので、
「無借金経営=優良企業」
というイメージを持たれることも少なくありませんが、
実際には、メリットとデメリットが存在するので注意が必要です。
また、無借金であっても、流動比率や自己資本比率が低ければ財務安全性が高いとは言えません。
流動比率についてはこちらの記事で解説しています
→流動比率と当座比率とは?|短期的な支払い余力を測る安全性指標をわかりやすく解説
自己資本比率についてはこちらの記事で解説しています
→自己資本比率は何%が安全?|目安と業種別水準・危険ラインをわかりやすく解説
無借金経営のメリット
財務面の身軽さ
無借金経営は、
- 利息の支払いがない
- 返済に追われることがない
という意味では、非常に健全で安定した経営に見えます。
借入金の返済に追われたり、金利上昇リスクの心配がありません。
なお、借入金には利息というコストがありますが、自己資本にも株主資本コスト(株主への配当など)が存在します。
無借金経営は一見コストが低いように見えますが、資本効率の観点では必ずしも有利とは限りません。
経営の独立性と意思決定のスピード
借入金に頼った経営をしていると、
資金の出し手である銀行の意向を重視せざるを得ない状況が生まれやすくなります。
新規事業参入やM&A、事業撤退など経営に大きな影響を与える決断について、
取引銀行の同意が必要となり、経営の独立性が保ちにくくなったり、
スピード感をもった経営判断がしにくくなるといったことがあります。
その点、無借金経営だと、取引銀行の意向を伺うことなく、独立性を保った経営ができます。
無借金経営のデメリット
必要時の資金調達が困難
企業活動を続けていると、
- 急な売上減少
- 取引先の倒産
- 想定外の設備投資
- 外部環境の急変
など、自社の努力だけでは避けられない理由で、資金が必要になる場面が出てきます。
このようなとき、「いざとなったら銀行から借りればいい」
と考えていても、普段から銀行取引がない場合、
簡単には融資を受けられないことがあります。
銀行は、融資を実行し、返済を受けるという一連の流れを繰り返すことで、
その会社に対する信用を積み上げて評価しますが、
普段から取引がないと実績も信用も積み上がらないためです。
成長機会の逸失
無借金経営を継続するには、運転資金負担も考慮し、手元資金を潤沢にしておく必要があります。
これは、裏を返せば、成長投資に振り向ける資金が限られ、
投資による成長機会をロスしているということも言えます。
企業が成長するうえで継続した投資は不可欠であり、
長期的な視点では無借金経営の拘りが成長の足かせとなるリスクがあります。
運転資金の負担についてはこちらの記事で解説しています
→運転資金とは|「売れるまでに一時的に必要となるお金」
無借金経営が裏目に出た事例
実例としてよく挙げられるのが、スカイマークです。
スカイマークは、2015年に民事再生手続開始の申立を行い、実質的な経営破綻に追い込まれました。
破綻の要因は複合的ですが、銀行との取引実績が乏しかった点も一因と指摘されています。
当時、同社では国際線参入を目指して大型旅客機を発注するなど積極投資を行う一方、円安の進行によるドル建てリース料の増加や燃料費高騰が経営を圧迫していました。
一般的には、経営が苦境に陥った際には、取引銀行が支援をし、再建をはかることがあります。
しかし、スカイマークは銀行との取引実績が乏しかったため、こうした支援を受けることができず、
結果、資金繰りが行き詰まりました。
これは、無借金であったこと自体が悪いのではなく、銀行との関係が薄かったことが
大きなリスクになった例だと言えます。
実質無借金という考え方
有利子負債はあるものの、
有利子負債 < 現預金
となっている会社を、「実質無借金」といいます。
この状態であれば、
- 借金はあるが、手元資金でいつでも返せる
- それでいて銀行との取引実績もある
という、バランスの取れた財務状態と言えます。
たとえ借入が不要な状況であっても、
定期的に銀行と取引を持ち、関係を維持しておくことは、
経営上とても重要です。
まとめ
無借金経営は、一見すると理想的に見えますが、
- 緊急時に資金調達できない
- 銀行との関係が希薄になる
というリスクも併せ持っています。
大切なのは、
「借金がないこと」
ではなく
「必要なときに、きちんと借りられること」
無借金かどうかは「結果」にすぎません。
重要なのは、資金調達力と成長投資のバランスです。
※本記事は決算書の読み方を一般的に解説するものであり、特定企業への投資判断や取引を推奨するものではありません。実際の判断にあたっては、必ず最新の公式資料をご確認ください。


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